上達につながる模写のやり方 ― 「写すだけ」で終わらせない観察の手順
公開日: 2026-10-03
模写は昔から定番の練習法です。ただ、何十枚も模写したのに自分の絵になると描けない、という声もよく聞きます。原因はたいてい「形をなぞること」が目的になっていて、なぜその形なのかを観察していないことにあります。
この記事では、模写を「観察の練習」として行うための手順を、描く前・描いている間・描いた後の3つに分けて紹介します。
描く前:1分だけ眺めて、気づいたことを3つ書く
いきなり線を引き始めないでください。まずお手本を1分ほど眺めて、気づいたことを3つメモします。「頭が画面の上3分の1に収まっている」「髪の影は青みがかった紫」「肩の線より腰の線のほうが傾いている」など、短い言葉で構いません。
言葉にすると、目が「どこを見るべきか」を覚えます。メモがないまま描くと、目立つ部分(顔や目)ばかりに時間を使い、全体の比率や重心といった、実は絵の印象を決めている部分を見落としがちです。
描いている間:大きい形 → 中くらいの形 → 細部の順を守る
- 最初の2〜3分は、全体を囲む大まかな外形(シルエット)だけを取る
- 次に頭・胴体・腕などのパーツの位置と大きさを、ブロックのような形で置く
- パーツの比率が合っているか、お手本と並べて確認する(ここで直すのが一番ラク)
- 最後に目・指・髪の毛先などの細部を描き込む
細部から描き始めると、途中で全体がはみ出したり、顔だけ大きくなったりします。デジタルなら、お手本と自分の絵を半透明で重ねられますが、重ねて確認するのは「描き終わってから」にしましょう。描きながら重ねると、目で測る練習になりません。
ヒント: 比率を確かめるときは「頭の高さを1としたとき、肩幅はいくつ分か」のように、お手本の中の一部分を物差しにすると誤差に気づきやすくなります。
描いた後:ズレを1つだけ選んで言葉にする
描き終わったら、お手本と並べてズレを探します。全部直そうとすると疲れるので、一番大きなズレを1つだけ選んで「首が短くなった」「目と目の間が広すぎた」のように書き残してください。
そのズレは、自分の「描き癖」であることが多いです。何枚か続けると「いつも首が短い」「いつも顔が左に傾く」といった傾向が見えてきます。癖が分かれば、オリジナルの絵を描くときにも意識して直せます。
トレースとの使い分け
トレース(上からなぞる)は、線の強弱やペンの入り抜き、曲線のリズムを手に覚えさせる練習としては有効です。一方で、形を目で測る力は鍛えられません。比率や形の取り方を身につけたいなら模写、線の気持ちよさを身につけたいならトレース、と目的で分けるのがおすすめです。
模写をSNSや絵日記に載せるときのマナー
- 「〇〇さんのイラストを模写」「〇〇(作品名)の模写」など、元の作者や作品を明記する
- 作者が模写の投稿を禁止している場合は投稿しない(プロフィールや規約を確認する)
- 模写した絵を自分のオリジナルとして発表したり、販売したりしない
練習として描くこと自体は問題になりにくいですが、公開するときは元の作者への配慮が必要です。迷ったら非公開で記録しておくのが安全です。絵描きの絵日記では作品ごとに公開・非公開を選べるので、模写は非公開、オリジナルは公開、と分けて記録するのも一つの方法です。
まとめ
模写で上達するかどうかは、枚数よりも「何を観察したか」で決まります。描く前に3つメモし、大きい形から描き、描いた後にズレを1つ言葉にする。この3つを意識するだけで、同じ1枚の模写から得られるものがかなり変わります。